ホンダとGMの北米での協業のニュースが10日ほど前に報道されました。( 9月3日付Bloomberg: https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-09-03/QG2YNQT0AFBC01) その中で、購買でも協業し効率化を図るとしている2社ですが、これが北米でもビジネスを展開する部品サプライヤーに対して大きな影響をあたえているかもしれません。その影響もあってかQADのWebサイトでもMMOG/LEについて情報を掲載していますが、そちらへのアクセスも増えており、注目度があがっています。今回はMMOG/LEについての解説をしていきたいと思います。
MMOG/LE とは
近年、自動車のOEM各社は取引を行うサプライヤーに対して、部品供給のパフォーマンスと品質の維持のためにグローバル標準の基準を満たすように要求しており、その傾向は年々高まってきています。収益の維持や事業の拡大を一方で目指しながら、同時にOEMからの要求に応えグローバルスタンダードの水準を満たすという難しい課題がサプライヤー各社に対する大きなプレッシャーとなっています。
自動車業界でビジネスを行うために最も重要な規格の一つとしてあるのが、北米自動車協会(AIAG)と欧州自動車協会(Odette International)が18年前に主導し策定したMMOG/LE(Material Management Operations Guideline/Logistics Evaluation)と呼ばれる資材管理業務のガイドラインと物流業務評価になります。18年前から改定を重ね、バージョン5が昨年リリースとなり、サプライチェーンプロセスを評価するためのガイドラインとして、業界のデファクトスタンダードとして位置づけられています。
また、MMOG/LEはトヨタやホンダをはじめとする日系OEMを中心に納めてきた部品メーカーが更に顧客基盤を拡大していきたいと考える際にも非常に重要な意味を持つようになってきています。MMOG/LEを採用している、フォード、FCA、GM、ボルボ、ジャガーランドローバー、PSA、ルノーなどの欧米OEM各社との取引を行うための必須条件となります。また、OEMだけでなく、コンチネンタルやZFなどのTire1サプライヤーなども採用しており、MMOG/LEの準拠は、避けては通れない関門となっています。
MMOG/LEはグローバルサプライチェーンの開拓や変更などを加速するツールとして世界中で採用されており、IATF16949が品質基準としてのガイドラインを示すのに対しMMOG/LEはサプライチェーンの能力と納品のパフォーマンスを改善するための指標として評価されています。
MMOG/LEを採用することによるメリットは;
更にAIAGによると、MMOG/LEのアセスメントを行い業務改善を行ったサプライヤーで最大85%の急ぎの出荷による物流コストの削減や、60%もの在庫削減が見られたと報告されています。標準化されたガイドラインに基づき業務を再設計することでラインの停止や作業員の能力差異、いわゆるスキルギャップのリスク、あるいはサプライヤー管理に改善効果が見られるとしています。
MMOG/LE に準拠するためには
MMOG/LEはビジネスプロセスとITシステムの整合性や、求められている基準と自社のビジネスプロセスがどの程度マッチしているかを知ることが必要です。そこでアセスメントを行う必要があります。アセスメントはサプライヤーのサプライチェーン業務がMMOG/LEの推奨するベストプラクティスと比較してどこに差があるのかを診断することが出来ます。こちらがベストプラクティスのビジネスフローです。
MMOG/LEアセスメントの概要は以下の通りです:
新評価基準と標準化のコンセプトについて
MMOG/LEの最新はバージョン5となっており、2019年7月に正式にリリースされ、今日のサプライチェーンに関連する問題点を取り込んだ新しいベストプラクティスにアップデートされています。グローバルサプライヤーは2020年までにこのバージョンへの移行が要求されています。
MMOG/LEのカバーする範囲であるテクノロジーやサプライヤー管理、リスク管理、品質管理やパフォーマンス管理などは、近年様々な変化が生じており、MMOG/LEも以下のように進化しています:
新採点基準
MMOG/LEでは、各審査項目に対してF1, F2, F3の三段階で配点に重みづけを行っています。その中でもF3は、サプライチェーン管理を行う上で最も基本的かつ重要だとされる項目がこれに当たります。F3項目で一つでも要求水準を満たせていないものがあると、自動的にC評価またはZC評価となります。今回の改定からこのF3項目の数が従来の34項目から43項目に増えており、A評価、あるいはZA評価を取ることの難易度が高くなっています。
MMOG/LEアセスメントでは、業務プロセスはなるべく自動化され、ERPシステム(企業資源計画システム)を必ず使用しなければならないとしています。生産計画やスケジュール管理、あるいは受発注のやり取りのためにエクセルシートを使用することは厳しく制限されています。これまでの歴史を振り返ても、エクセルシートは、入力ミスや連絡の遅れなどの原因となり、過剰在庫や納期遅れの要因として批判されてきました。その証拠にあるサプライヤーでは、MMOG/LEのベストプラクティスを採用し徹底的に導入したことにより60%もの在庫削減に成功したという例もあります。
43に及ぶF3項目は、サプライチェーン管理はERPやEDI、Webポータル、バーコードシステム、品質管理プロセスなどのシステムを活用したものでなければならないという考え方に基づいて定められています。これに加え、是正措置や顧客、仕入先間のコミュニケーション、リスクマネジメント、サプライヤーマネジメントなどにフォーカスした補完的な品質管理プロセスも取り入れられており、F3項目の中でもIATF16949のコンセプトが採用されているものも含まれています。
幾つか実際のF3の審査項目を見てみましょう。上述の通り、F3で基準を満たせていない場合、OEMやTire1と取引を行うことはできません。
さて、あなたの会社はこれらの要求水準を満たしているといえますでしょうか?
アセスメントの提出方法
これまで2002年から20年近くにわたって、エクセルベースのMMOG/LEアセスメントツールが使われてきましたが、今回の改定に伴いOdetteがMMOG.npと呼ばれる新しいウェブベースアプリケーションを開発し、このアプリケーションを通じてのみ、アセスメントを顧客に提出出来るように変わりました。MMOG.npは www.mmogle.com からアクセスすることができ、サプライヤー各社はこちらへ順次移行するよう求められています。
今回の新しいMMOG/LEバージョン5は、OEMとサプライヤー間のサプライチェーンの大きな進化と、よりハイレベルなサプライチェーン管理のあり方を示しているといえます。MMOG/LEは将来の自動車業界の更なる成長と効率性の向上を推し進める原動力となり、この激変する不透明な時代に道筋を示す光としての役割を担っています。
QAD Adaptive ApplicationsはMMOG/LEやIATF16949の基準を満たすための機能が標準で搭載されているソフトウェアです。計画系ではQAD Adaptive ERPやQAC Cloud EDI、サプライヤーコミュニケーションにはWebベースのサプライヤーポータル、品質管理ではQAD Enterprise Quality Management Sytstem (EQMS) を導入することにより新しい顧客の獲得や欧米のOEMとの契約からビジネスの立ち上げ、量産、納品までをスムーズに行うことをサポートします。エクセルを頻繁に使用して生産計画を立てていたり、スクラップやサプライヤーのパフォーマンスのレポートがリアルタイムで出ないシステムになっていませんか?欧米のOEMやTire 1 は監査を通じて目を光らせています。機会損失になる前に、適切なレビューと検討をしてみてはいかがでしょうか。
また、QAD BlogではIATF16949についても記事を書いています。ぜひそちらもあわせてお読みください。
https://www.qad.com/ja-JP/blog.jp/-/blogs/-iatf16949
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