デジタルツインによる設備資産の維持

普段の生活の中で、自動車や家電製品、ましてや自分自身も日常のメンテナンスが必要なものについて、推測して間違うよりも、メンテナンスが必要な時期を知るほうがいいでしょう。もしこれらのケースで間違えたとしたら、自動車であればより高価な修理が必要になり、家電製品だと交換が必要になるかもしれません。個人の健康に関していえば、予想もしなかった医師の診断につながる可能性があります。

工場設備の維持もこれらと同様です。製造業は、業務が滞らないために多大な時間と投資を行いますが、製造業務の大きな部分を占めているのは、有形固定資産などの長期的な設備資産を確実に運用できるようにすることです。適切なアプリケーションとプロセスがあれば、有形固定資産の管理を改善し、製造プロセス全体を改善することができるテクノロジーがあります。

 

設備メンテナンスの推移

設備管理とメンテナンスは、長年にわたりいくつかの進化を遂げてきました。その一例をご紹介します。

紙ベースのメンテナンス:

数年前、私は自動車整備士として働いていました。私たちはチルトン修理マニュアル本を数巻持っていました。チルトン修理マニュアルは自動車修理の百科事典で、毎年1冊ずつ購入が必要でした。30年近く整備士をしていた上司は、壁一面にそれらを持っていました。その本にはたくさんの修理知識が詰まっています。今日の作業を想像できますか?おそらく無理でしょう。

マイクロフィルムによるメンテナンス:

また別の機会に、私はシアーズで乾燥機の部品を注文していました。彼らはすべての部品をマイクロフィルムでカタログ化していたので、店員と私は、その部品を注文するために、それに適したモデル、年式、セクションを見つけるまで、10数枚ものマイクロフィルムを調べました。今ではオンラインで部品を探すことができるようになりました。

デジタル化されたメンテナンス:

先週、私は過去にいくつか作業をお願いした自動車販売店にいました。彼らはバーコード化された車両識別番号(VIN) をスキャンしデータ化することで、過去10数年以上にさかのぼって作業した修理内容や部品すべてをリストアップできるようにしています。つまりその自動車販売店がもっているのは、私の車修理のデジタルツインなのです。

 

デジタルツインとは何?

デジタルツインとは、あるモノとその履歴の一部またはすべてをデジタルで表現したものです。例えば、自分の車の整備履歴は、その車の履歴の中でもごく一部です。しかし、もしその履歴が生産プロセスの最初から追跡されていたとしたら、あなたはより完全な姿を見ることができるでしょう。すべての構成要素の寿命に触れ、すべての工程、オペレーター、機械を追跡して、部品表から完成車ができることは、完全なデジタルヒストリーでしょう。このようなヒストリーに容易にアクセスできるという価値が理解できるでしょう。

今では自家用エンジンや乾燥機、さらには冷蔵庫の回路図さえ見ることが出来ます。これらを活用することで、データ分析やシステム監視を可能にし、問題が発生する前に問題を特定することもできます。つまり工場の機械の中で何が起こっているのかを知ることで、ダウンタイムを防ぐことができます。試作においては、シミュレーション技術を利用することで、新たな可能性や将来の計画まで表現することができました。

そのメリットは何でしょうか?

自動車販売店は、私の車に取り付けられた部品が何かを知っています。サービスエンジニアは、オンラインで私の車の修理履歴にアクセスでき、リコールがある場合には私に通知することさえできます。私は以前、エアバッグにちょっとしたトラブルがあり、エアコンのコンプレッサーに問題があったので、これらがうまく機能していることを知っています。

製品のデジタルツインを使用すると、部品が使えなくなることを防ぐことができます。

 

デジタルツインを使って設備資産をメンテナンスする

設備資産の状態監視 (Asset Monitoring)、使用状況の分析、予知保全、修理履歴は、保守部門にとって重要です。企業が機械のパフォーマンスをよく理解して予測し、新しい収益の原泉を見出だすことができる設備資産のダイナミックなデジタル表現は、企業の運営方法を変える可能性すらあります。固有の資産IDが、すべての資産固有のデータと連携するために使用されます。

製品シミュレーション、プロトタイピング、製造BOM、受注BOM、製造実績BOM、出荷BOM、および現在フィールドで構成されているものは、デジタルツインを使用して維持できるデータの例です。 完成品についても同様です。

QADがデジタルツイン技術をサポートするために現在取り組んでいる2つの方法は、まず一つめとして、ERPからインストールされた基本アイテムの履歴に接続します。製造実行は、製造プロセス中にオペレーターと機械固有の情報の両方をキャプチャし、デジタルツインとして使用することができます。二つめは、製造現場の機器を設備資産管理 (EAM) モジュールに接続することです。 機器の監視により、EAMモジュールにメンテナンス要件を警告し、すべての保守作業の履歴をサポートできます。

また、QADは、設備資産に関連するデータを構築するために使用できる情報を保存するデータレイク技術を導入しています。例えば、品質とサポートコールの記録は、Service Supportモジュール (SSM) を使用することで、構成可能なアイテムをメンテナンスすることが出来ます。出荷されたアイテムの現在の構成は、SSMを使うことで、アイテムがフィールドにある後に任意のコンポーネントアイテムの交換を記録することで維持されます。QADの成熟度モデルを使用することで、製造業者はデジタルツインの属性を形成し、日々の業務に効率性を加えるために、トレーサビリティの属性に関連して、現在の立ち位置を定義することができます。